誰も握っていない吊り革が、湿っている。
始発の車内で、同じ一本だけだという。
拭いても、次の駅までにまた同じだけ湿る。
車両を変えても、同じ位置の一本だけがそうなるという。号車が違っても同じだ。
その一本を避けて乗るようになった人がいる。
何も起きなかった。半年、何も起きなかった。
ただしその半年ぶん、その人の乗車履歴だけが一駅ぶん短く記録されていたという。

添付は差出人から送られた写真を、受付時に縮小して綴じたもの。原本は別途保管する。
受付年月日は、受け取って書き起こした日を記す。公開はこれより後になる。